「こわい歯の病気」ってむし歯だけだと思ってませんか?
歯周病のこと、甘く見ていませんか?
むし歯って痛い思いをするからみんな警戒するんですが、
歯周病は痛みが出ることはあまりないので軽視されがちです。
歯周病を軽視して放置した結果、
歯が揺れてきて歯医者に行ったものの、もうすでに手遅れ、、、
なんて患者さんもよく見ます。
歯医者で口の中の水を吸うすごい音の、バキュームと言う機械わかりますか?
私は以前重度の歯周病の患者さんのクリーニングをしていて、
バキュームの吸う勢いで歯が抜けてしまったこともあります、、、
あれは衝撃だったわね、絶対一生忘れないわ
今回は、そんなとってもこわい歯の病気、歯周病についてお話していこうと思います。
歯周病ってどんな病気?
歯周病は『骨の病気』!
歯周病って、歯ぐきから血がでたり、歯ぐきがブヨブヨになって歯が揺れたりとか、
『歯ぐきの病気』
と思っている方いませんか?
ちょっと待ったー!
それは間違いです!
正確に言うと、だいたい間違いです!
歯周病は、
『骨の病気』
です!!
歯の『骨』?
ここで、その『骨の病気』というのを理解するために、歯の構造について簡単に説明します。
大まかな歯の構造が下の図です。
歯は歯ぐきに支えられているように見えますが、実はそうではなくて、
『歯槽骨』という骨に支えられています。
この歯槽骨が歯周病菌に感染するとだんだんと上の方から溶けて(無くなって)いってしまいます。
これが、『歯周病』です。
歯周病と全身疾患
歯周病とは骨の病気であることがわかっていただけたと思いますが、
歯周病は以下の疾患とも関わりがあることがわかっています。
・糖尿病
・狭心症
・心筋梗塞
・脳梗塞
・誤嚥性肺炎
なぜ歯周病になるの?
歯周病の原因は磨き残し!?
では、なぜ歯周病になるのか。
それは、磨き残しに原因があります。
歯磨きがうまくできていないとできるプラーク(歯垢)は、
実は磨き残しと言うよりも、それによりできる細菌の塊です。
この細菌の中にいわゆる歯周病菌というものも含まれていて、
この細菌の出す毒素が、歯茎の炎症や歯槽骨の吸収(溶かす)を引き起こします。
歯石は原因ではない?
あれ?でもこの前歯医者で「歯石のせい」って言われたような…
歯周病には『直接的原因』と『間接的原因』があります。
直接的原因…問題の原因が、「それそのもの」であること
間接的原因…問題の原因が、「それそのもの」ではなく、
「それ」により生み出された何か(環境など)であること
歯石は、このうち間接的原因にあたり、
歯石そのものが悪いというよりも、
歯石があることによって歯周ポケットの中に歯周病菌の繁殖しやすい環境を作ってしまうことが悪いのです。
ここまで細かく口頭で説明されてもわかりにくいので、そのような表現をしているのですね。
間接的原因は歯石以外にもたくさんあります。
まあとにかく悪いということに変わりはないよ!
歯周病の症状
主な症状
歯周病には次のような症状が見られます。
・歯ぐきの炎症、発赤
・歯ぐきからの出血
・歯の揺れ
・口臭
・歯ぐきが下がる
・歯ぐきが下がったことによる知覚過敏
上にあげた症状が全て出るわけでもないですし、あげていない症状が出る可能性もあります。
個人差があることや、歯周病はそれに派生した症状(知覚過敏など)が出ることもあるためです。
喫煙者は歯周病の症状が特に出にくいです。
気がついた頃にはかなり進んでいたということもあります。
定期的に歯科検診を受けましょう。
進行度による症状の違い
歯周病は進行度によって症状が異なります。
健康な歯ぐき
汚れはなく歯ぐきも薄いピンク色で引き締まっており、
健康な状態です。
軽度歯周炎
プラークや歯石が溜まってきており、
歯ぐきの炎症が見られます。
歯槽骨の軽い吸収が見られます。
中等度歯周炎
プラークや歯石が溜まり、
歯ぐきの炎症や歯槽骨の吸収が見られます。
歯が軽く揺れてくる場合もあります。
重度歯周炎
プラークや歯石がかなり溜まり、
歯ぐきの炎症や歯槽骨の吸収が大きく見られます。
歯は大きく揺れ、場合によっては抜歯となることもあります。
特に奥歯のような根っこが複数ある歯の場合、
根っこの間にまで歯石が溜まり治療が困難なケースもあります。
歯周病は治る?
歯周病は治らない!
厳しいことを言います。
一度かかった歯周病は完全に治るということはありません。
細菌感染によって溶けてしまった骨は基本的に戻らないですし、
歯周病菌は歯ぐきや骨など組織内に入り込んでしまうため、完全に除去することは難しいからです。
歯周病は『治す』よりも『止める』
治らないってそれじゃもうどうしようもないじゃん…
そんなことはありません。
確かに歯周病は治せませんが、進行を食い止めることはできます。
『歯周病治療』の目的は主にここにあります。
歯周病の原因となるものを排除することによって、
これ以上歯周病が進行することを食い止めるのです。
歯周病の治療法
クリーニング
歯周病の間接的原因はたくさんありますが、中でも歯石は歯周病の発症・進行に大きく関わってきます。
しかし、歯石は歯ブラシでは落とせません。
なので、歯医者で機械を使ってクリーニングをしてもらう必要があります。
このクリーニングは歯石の付き具合によって回数を要する場合があります。
よく「一度で掃除してくれなかった」 「何度も通わされた」と言われる患者さんもいますが、
決してボッタクリではありません(中にはボッタクリもいるかもしれませんが)。
そもそも、『クリーニング』というより『歯周病治療』ととらえたほうが正しいでしょう。
自分の不注意でつけたんだからつべこべ言わずに通いなさい!
セルフケア
歯医者でキレイにしてくれるなら、それでよくない?
いるんです。たまーにこういう患者さん。
誰か月に代わってお仕置きしてもらえないでしょうか。
それとも歯周病がお仕置きなんでしょうか…。
話を戻します。
なぜ歯医者でキレイにしただけではダメなのか。
それはとっても簡単な理由です。
歯医者でクリーニングすることより家で歯磨きするほうが多いでしょ!!
歯医者に毎日行ってクリーニング受けてる人いますか?
「美容室でキレイにシャンプーしてもらったから」って毎日シャンプーしない人いますか?
いませんよね。
歯は自分でお手入れする回数の方が圧倒的に多いんです。
それをちゃんとやらなかったらどうなってしまうかはわかりますね。
予防も同じ
これまで歯周病にかかってしまった人の治療についてお話しましたが、
まだ歯周病になっていない、予防の段階でもすることは同じです。
普段しっかり歯磨きをして、
それでも溜まってしまったプラークや歯石を定期検診でキレイにしてもらう。
そして、同じ場所にまたためてしまわないように気を付ける。
歯周病になってしまうと治らないとお話ししましたが、
歯ぐきが腫れてしまっているだけの段階、歯肉炎の段階でしたら治ります。
まだ歯周病になっていない人は、ここまでで食い止めて健康な歯ぐきを目指しましょう。
まとめ
歯周病のこわさ、わかっていただけたでしょうか。
恐らく皆さんが思っているよりも、歯周病ってこわい病気です。
これは厚労省による「歯の喪失原因」の分布です(2016年のデータ)。
歯周病が4割近くを占めているのがわかります。
実は虫歯よりも多いんです。
若いうちに歯を失ってしまう人はむし歯が原因であることが多いですが、
だんだんと歯周病が原因の割合が増えていきます。
定期検診ってむし歯がないか見るためだけだと思っているかもしれませんが、
歯周病予防や治療の面でもとても重要な役割を果たしているんです。
とにかく、定期検診に行くこと。
そして、毎日の歯磨きを怠らないことを心がけてください。